62 おばあちゃん 何が欲しいと 聞く孫に お前と遊べる 元気が欲しい
62 おばあちゃん 何が欲しいと 聞く孫に お前と遊べる 元気が欲しい
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おばあちゃん 何が欲しいと 聞く孫に お前と遊べる 元気が欲しい
おばあちゃんが入院した。両親共働きで、家事一切おばあちゃんがやってくれていたのだが、一大事となった。
そのおばあちゃんは、孫にとっては、晩御飯を作ってくれていたことはもちろん、おやつも作ってくれたし、一緒に遊んでくれていた。もちろん、孫にはわからないだろうが、掃除洗濯、宅配の受け取り、集金人への支払い、何から何まで家のことはほとんどやってくれていた。その、おばあちゃんが、病気で入院した。
両親は不自由さもあって、てんやわんや。孫は不機嫌な両親の間で、不自由さよりも寂しさしかない。
そんなある日曜日、みんなでお見舞いに行くことになった。家族個々、何かをお見舞いに持っていくようであることを察知した孫は、それなりに考えておばあちゃんと一緒の時に遊んでいた、車のおもちゃを持って行った。おばあちゃんはきっとこれで一緒に遊べるので、喜んでくれると思ったのだろう。
そして、プレゼントの順番が回ってきた。おばあちゃんはニッコリとして喜んでくれたようであるが、手にとって、おもちゃの車を押して、ブーブーと走らせてくれない。
あれ、いつもと違う。どうして? おばあちゃんはあれだけ車のおもちゃでで遊ぶことが好きだったのに……。
そして、そこでやっと気付いた。おばあちゃんは、自分と遊んでくれていたのだということを。車のおもちゃで遊ぶのが好きだったのではなく、自分のために遊んでくれていたんだということを。そして今は、おばあちゃんは、それができないように元気がないのだということを。
おばあちゃんは、孫に、「何が欲しい?」といつも優しく声掛けをしてくれていた。孫が困ったときや、病気のときは特にそう言っていた。
それを思い出して、孫は、やっと気遣いして、「おばあちゃん、何が欲しい?」と優しく声掛けをした。
おばあちゃんは、車のおもちゃを走らせながら孫と楽しんでいた時を思い出しながら一緒に車で遊べていない自分にふと気がついて、「お前と遊べる元気が欲しい。」と応えた。
確かに、可愛い孫がいても、一緒に遊ぶ体力がなければ、仕方がない。
お年寄りは、食べ物やお金などではなく、元気が欲しいのだ。
とてもじんわりと来る、優秀作品。
応募用紙にはペンネームがないので、どなたかいいペンネームを考えていただけたらありがたい。
この短歌にあうイラスト募集しています。詳しくは、miwashiro@mx2.wt.tiki.ne.jp (岩城まで)